久我月は相手にもしたくないゴミだと思い、顔を上げて販売員を見つめ、冷たい声で言った。「この二本のネックレスを包んでください」
「よく言うわね!」
小沢夢は焦りを隠せなかった。彼女もこの二本のネックレスが欲しかったのだ。久我羽が買ってくれれば、借りて身につけられると期待していたのだ。
でも彼女は知っていた。久我羽はまだ清純なイメージを保たなければならず、久我月と正面から対立するわけにはいかないことを。
だから、悪役は自分が買って出るしかなかった。
彼女は急いで飛び出し、久我月をゴミのように貶めた。「あなたにこの二本のネックレスを身につける資格があるの?」
「あなたなんて田舎者でしょう。帝都に戻ってこられて、Queenのデザインしたネックレスを実際に見られるなんて、前世で積んだ徳のおかげよ」
「それに、あなたには買う金もないでしょう。ここで恥をさらすのはやめなさい」
田舎者?
久我月は冷ややかに笑った。
若様が正体を明かしたくないと言わなければ、あなたたちがここで吠えまくることなんてできないのに。
久我羽は二本のネックレスを虎視眈々と狙い、久我月の言葉など全く気にしていなかった。
彼女は直接一橋逸飛のクレジットカードを取り出した。「Queenのデザイン作品は一点500万円からですが、この二本のネックレスは世界に一つしかないので、6倍の価格を出しましょう」
「包んでください」
6倍の価格というと3000万円、二本で6000万円……
一橋逸飛は少し血を吐きそうだった。
一橋家は大きな財閥で、以前の彼にとってはこの程度の金額は大したことではなかった。
しかし今は一橋家の経済は全てお七男の若様の手中にあり、祖父母も三房の顔色を伺わなければならず、まして両親はなおさらだった。
彼の月々の小遣いはたった3000万円だった。
一度に6000万円を使うとなると、正直、一橋逸飛も少し痛かった。
久我月もこのネックレスが気に入ったのだろうか?
二ヶ月分の小遣いを犠牲にして、久我月の心を射止められるなら...そんなに損ではないかもしれない。
「申し訳ありません、久我お嬢様。先ほど上からの通達で、ネックレスは販売可能ですが...」