久我月は七男の若様がますます見かけによらぬ悪党だと感じていた。表面上は冷淡で禁欲的な様子なのに、実際は...ちっ!
彼女は眉を上げ、意味深な目で彼を一瞥し、上着を一橋貴明に返して、キャップを被ったまま、ショッピングモールの外へ向かった。
一橋貴明は彼女の後ろをついて行き、無関心そうに目を細め、深い瞳で、手に持っていたタバコを灰皿で消した。
松本旻が車でショッピングモールを通りかかった時、目の端で中を覗き込んだところ、ある人物が目に入った。「おや、華子、あそこにいるの、七男の若様じゃないか?」
中村少華は一瞬固まり、見てみると、目を見開いた!
まさしく、久我月の後ろをぴったりとついて歩いている男は、彼らの賢明で威厳のある七男の若様ではないか?
七男の若様を見間違えることはあっても、久我月を見間違えるはずがない。
あの娘は背が高くスレンダーで、オーラが特別強く、黒いベースボールキャップを被って、クールでかっこいい。中村少華は目をつぶっても間違えようがなかった。
七男の若様は本当に魔が差したんだ!
中村少華は松本旻の方を向いて叱りつけた。「バカかお前は、早く車を寄せろよ。七兄さんにタクシーで帰らせる気か?」
考えてみれば、彼らの賢明で威厳のある、堂々とした一橋七男若様がタクシーに乗るなんて、見るに耐えないことだった。
久我月がちょうどタクシーを拾おうとして手を上げた時、黒いベントレーが目の前に停まった。
あっ...
彼女は一瞬止まって、下を見た。
窓が下がり、松本旻のむかつくような笑顔が現れた。
「何をぼんやり立ってるんだ、乗れよ!」松本旻は久我月に向かって意味ありげに笑いかけ、彼女の後ろに立つ七男の若様をちらりと見た。
久我月は遠慮なく乗り込み、言った。「御景ヴィラまで、お願いします。」
松本旻:「...」
「随分と丁寧なものだな」助手席の中村少華が冷ややかに鼻を鳴らした。
久我月は中村少華を無視した。どうせ中村楽が、彼に気を使う必要はない、ただの中二病少年だと言っていたのだから。
彼女は車に乗ってからずっとLINEをしていた。