頭の中でいろいろと想像を巡らせた後、一橋貴明は動画を開いた。すると、不思議な気持ちになった。
これは一体何なんだ？
写真にはDLモールのスタッフたちの声と、久我羽が演じた姉妹の絆のシーンが映っていた。
「久我家のお嬢様が戻ってきたって聞いていたわ。先日、久我月が身分を隠して、久我家の若様と怪しい関係になったって聞いたわ。本当に気持ち悪い」
「そうそう、私も聞いたわ。数日前の話よ。久我家の若様は十数年も会ってない姉に、まさかこんな形で騙されるなんて！」
「自分の弟を誘惑しながら、元婚約者の叔父とも怪しい関係を持っているなんて……」
「こんな不埒な姉に、久我次女様があんなに優しくするなんて、目が見えないのかしら！」
これらの下品で不快な言葉が、一言も漏らさず動画に録音されていた。一橋貴明はこれらの言葉を聞いて、眉間にしわを寄せ、表情が徐々に暗くなっていった。
［上瘾：DLモールにいるのか？一橋逸飛のバカ野郎が絡んでるのか？］
［月：うん。］
おっと！
周りの人々は、一橋貴明が携帯を片付け、突然立ち上がり、半分残ったタバコを苛立たしげに消すと、スーツの上着を手に取って出ようとするのを見た。
松本旻は慌てて声を上げた。「おいおいおい、七兄さん、もう行くの？」
「ああ」
一橋貴明は不機嫌そうに返事をし、かすれた声に冷たさを滲ませて言った。「お前らは続けろ。俺は用事がある」
数人は顔を見合わせた。
誰が七男の若様の機嫌を損ねたんだ？
女子トイレ。
中村楽はトイレに入ると、習慣的に周囲を観察した。
トイレには二列に三十以上の個室があり、曽我雪代の遺体は一番奥の個室で、後から用を足しに来た従業員によって発見された。
個室のドアは開いており、便器に倒れかかっていた女性は二十歳前後で、資料によると彼女は丁度二十一歳、大学卒業して半年だった。
曽我雪代はスーツ姿で、服装は乱れていなかったが、ストッキングと下着は足首まで下ろされていた。誰かに脱がされたような状態だった。
中村楽は唇を引き締め、表情を変えることなく、斉田あきひろから医療用手袋を受け取り、遺体の検査を始めた。
一通り検査を終えると、彼女は眉をひそめた。
