『笨徒』と『奇夫』の出演により、唐寧の女優としての地位が大衆の心の中で徐々に確立されてきたようだ。そして、彼女がモデルをしていた時と同様に、唐寧は一歩一歩着実に進み、人々に信頼を与えている。
これにより、世間の唐寧に対する信頼度はさらに高まり、彼女を林聲や北辰東と同じ一流の演技力を持つ者として位置づけた。もちろん、彼女にはまだ遠く及ばないが。少なくとも、彼女は女優としての地位を目指しており、認められた後にバラエティ番組に出演して人気を消費するような芸能人ではない。
『消えた家族』のオーディション日程が正式に通知されたが、主演女優の座を争っているのは顧姮と唐寧だけでなく、他の事務所からの芸能人も加わり、さらには韓国からの映画女優賞受賞者レベルの俳優も参加している。
今回の監督は、3度の国際的な賞を獲得した維安だ。女優たちが必死になっている理由は、彼の作品に出演すれば、受賞の可能性が非常に高いからだ。
どの俳優が小さな金の像を欲しくないだろうか?
これもまた、墨霆が唐寧にこの映画への出演を許可した重要な理由の一つだ。彼は妻のすべての努力に相応の報いがあることを望んでいる。
そして唐寧は…
彼女は最高のものに値する。
……
現在、正午12時、某五つ星ホテル。
青い唐装を着た老人が扇子を揺らしながら、2人のボディーガードを連れて監督維安の部屋に入った。二人が顔を合わせると、維安はすぐに熱心に老人に手を差し伸べた。「墨先生、久しぶりですね。相変わらずお元気そうで」
墨おじいさんは低く笑い、相手の感嘆の声を受けてソファに座った。「あなたの大監督としての華やかさには及びませんよ…」
「墨先生、あなたは大先輩の芸術家です。私なんかとは比べものになりません」
「今日来たのは実は2つの件があってね。維監督、顔を立ててもらえないかな?」墨おじいさんは扇子をゆっくりと揺らしながら言った。
「墨先生、あなたは大先輩で、芸能界の重鎮です。何でも仰ってください」維安はひげをなでながら笑った。
「まず一つ目は、あなたの映画で私にカメオ出演させてほしい。ギャラなしで参加するが、私の身元は秘密にして、誰にも知られないようにしてほしい」墨おじいさんは目を細めた。
相手は少し驚いた様子だった…