「あら、貴賓席の最前列に座っている二人、どこかで見たことがある顔じゃない?」
「どこ?」
ファンたちが辺りを見回し始めた。
「普通の人じゃないわ、こんな夜遅くにサングラスと帽子をかぶってるなんて」
「あの脚を見て...あれって唐寧じゃない?」
誰かが推測したが、距離が遠すぎて確信が持てなかった。「墨社長もいるみたい...夫婦で来たのかな」
「まさか、こんな小さな場所に?二人とも、一人は芸能界の大物で、もう一人は有名モデルだよ。こんな音楽授賞式に来るわけないでしょ」
「じゃあ、私の勘違いだったのかも」
...
そして、授賞式が正式に始まった。司会者の軽妙な語り口に会場は笑いに包まれ、ゴールデンメロディー賞、トップ10ポップミュージック賞、そして男女シングルチャンピオンなどの重要な部門は後半の見どころとなっていた。
歌手も俳優もモデルも、実際には違いはない。様々な場所に顔を出し、観客に覚えてもらい、好感を持ってもらう必要がある。歌手の道も、様々な伴奏や小さな場所から始まるのだ。ファンが先ほど言ったように、こういった授賞式は絶対的な権威や認知度はないので、墨霆が注目するはずがない。
しかし、このステージは多くの新人の夢を担っているのだ...
「K&G、もうすぐ出番よ」マネージャーが楽屋のドアをノックしてメンバーたちに告げた。
「分かった」メンバーたちは濃いメイクをし、鋲付きのかっこいいジャケットを着ていた。激しいダンスと歌があるため、3人はとてもファッショナブルに装っていた。
対照的に、唐靖宣はずっとシンプルだった。彼が歌うのはバラードだからだ。
3人は唐靖宣をちらりと見てから楽屋を出て行った。唐靖宣は全く警戒心がなく、ただひたすら緊張していた。
「洛星、もうすぐ出番よ。早くバックステージに行って」マネージャーが携帯を持ちながら急かし、彼の肩を叩いた。「頑張って。緊張しないで、普段通りの実力を出せばいいから」
唐靖宣はうなずき、突然、唐寧がランウェイで自信に満ちた姿を思い出した...
その後、彼は楽屋からバックステージへと向かった...
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