彼が早く到着したのは顧寧にも理解できたが、この個室番号は顧寧を笑うか泣くかわからなくさせた。
これが偶然だとは思えず、間違いなく彼が意図的に手配したものだった。冷少霆がこんなことをするとは思わなかった。
しかし、彼の心遣いは認めざるを得なかった。
顧寧の運は悪くなく、出かけるとすぐにタクシーが拾えた。道中も渋滞はそれほどなく、6時40分には店に到着していた。
もちろん顧寧が店に着いて、ウェイターが出迎えに来た時、520号室と言うと、そのウェイターは明らかに驚いた様子を見せた。
冷少霆が店に来た時は、かなりの騒ぎになっていた。彼の屈強な体格、長い脚、妖艶なほど端正な顔立ちは、アイドルタレントよりも目を引いたからだ。
彼が520号室を予約し、いくつかの手配をしたことから、明らかに彼女とディナーを楽しむつもりだと思われた。
元々、彼らは彼の彼女がセクシーで美しい女性だと思っていたが、来たのは若い学生だった。
この少女は確かに可愛いが、あまりにも若すぎて、全然釣り合わないじゃないか!
ウェイターが顧寧を520号室まで案内すると、顧寧は先に下がってもらい、自分でドアをノックした。
しかし手を上げたところで、まだノックする前にドアが開いた。
冷少霆は顧寧の声を聞いて、すぐにドアを開けたのだった。
目が合うと、二人とも一瞬驚いた。この瞬間、お互いの深い瞳の中には相手しか映っていなかった。
この瞬間、顧寧は本当に心を奪われてしまった。
容姿に魅了されたのか、内面に惹かれたのか、とにかく彼女は冷少霆に心を動かされたのだ。
彼のことをよく知らないはずなのに、名前と軍人という身分以外は何も知らず、会話もほとんどしていないのに、なぜか彼を非常に信頼していた。
冷少霆が顧寧に心を奪われたのは、容姿ではなく、感覚だった。
彼女は彼の鼓動を、思慕を、独占欲を掻き立てた。
時として人を好きになる理由は説明できないものだ。そして、なぜ好きなのか説明できない好意こそが、往々にして最も深い好意なのだ。外見的な条件に左右されないからだ。
「入って」冷少霆が先に我に返り、すぐに道を開けて顧寧を中に招き入れた。