「次男坊、お熱いしょうが湯ができました。」
ドアの外からメイドの声が聞こえた。
墨夜司は喬綿綿の額にキスをして、優しく言った。「しょうが湯を飲んでから寝るとよくなるよ。取ってくるね。」
彼は彼女から離れ、立ち上がってドアのところまで歩いた。
ドアを開け、メイドからしょうが湯を受け取り、ベッドの方に戻った。
喬綿綿のお腹の痛みはもう治まっていた。
墨夜司が差し出したしょうが湯を見て、彼女は手を伸ばして受け取り、一気に飲み干した。
墨夜司はベッドの側に立ち、彼女が飲み終わるのを見守り、空になった茶碗を受け取ると、彼女にかけられた薄い毛布を整えた。「寝なさい。私は書斎に行くよ。」
真夏でも、墨夜司は彼女をしっかりと包み込んだ。
頭以外のすべてを覆っていた。
喬綿綿は片手で毛布の端を握り、黒くて艶のある瞳をパチパチさせながら、ベッドの側に立つ男性を恍惚とした表情で見つめていた。
男性の表情は優しく、普段の冷たさや距離感が消え、身に纏う雰囲気も柔らかくなっていた。
軽く上がった唇の端には甘やかすような笑みが浮かび、漆黒で深遠な瞳にも浅い愛情が宿っていた。
彼が彼女を見つめる眼差しは、まるで大切なものを見るかのようだった。
このような眼差しは、完全に人を虜にしてしまう。
「どうしたの?」
墨夜司が立ち去ろうとしたとき、彼女がじっと彼を見つめているのに気づき、唇を少し曲げて身を屈め、彼女の頭を撫でた。
近づいてきた端正な顔を見つめ、喬綿綿は我に返り、首を振った。「何でもないわ。あなたは仕事に行って。私はもう寝るわ。」
そう言って、彼女は目を閉じた。
彼にはまだ仕事があるので、邪魔したくなかった。
「うん、じゃあ行くよ。」
墨夜司は再び彼女の額に優しいキスをして、立ち上がって外に向かった。
ドアのところまで来て、少し考えてから、室内のエアコンの温度をさらに2度上げた。
彼が振り返ったとき、喬綿綿は目を開けた。
彼がドアのところでエアコンの温度を調節しているのを見て、彼女の心に奇妙な感情が芽生えた。