「それがどうしたの。」墨奥様は冷たく言った。「結婚しても離婚はできる。結婚証明書を手に入れたら安心できると思っているなら、彼女は間違っているわ。」
「私たち墨家の門は、誰でも簡単に入れるようなものじゃないわ!」
彼女が言っている人物は、喬綿綿のことだった。
沈柔は瞳を光らせたが、もう何も言わなかった。
*
喬綿綿はおばあさまが差し出した箱を見て、躊躇しながら墨夜司を見た。
墨夜司は彼女に頷いて言った。「これはおばあさんからのお見舞いの品だよ。受け取りなさい。昔、母が嫁いできたときも贈り物があったんだ。」
彼がそう言ったので、喬綿綿は手を伸ばして箱を受け取った。
彼女は素直に言った。「ありがとうございます、おばあさま。」
箱の中に何が入っているかは、彼女にもわからなかった。
その場で開けて見るのも良くないと思った。
しかし、おばあさまがくれたものだから、きっといいものに違いない。
長年待ち望んでいた孫の嫁がようやく来たので、おばあさまの機嫌は良く、喬綿綿を見れば見るほど好きになり、彼女の手を取ってしばらく話を続けた。
最初、喬綿綿はおばあさまが家柄についての質問をすると思っていた。
しかし、会話が終わるまで、おばあさまは一言もそのことに触れなかった。
ただ彼女の年齢や、どこの大学に通っているかといったことを尋ねただけだった。
「司くんは小さい頃から私たちを安心させてくれた、主体性と考えのある子供だったわ。10歳を過ぎてからは、多くのことを自分で決めるようになったの。本来なら、私たちのような家庭では、結婚は家同士の連携を考えるものだけど、以前、彼のお母さんが紹介した家柄の良い令嬢たちも、司くんは誰一人気に入らなかったわ。」
「彼が好きでないなら、私たちも無理強いはできないわ。以前は、彼はなかなか恋人を見つけようとせず、仕事ばかりしていたから、この子は一生このままなのではないかと心配したものよ。今はよかった、彼が結婚して、私の心にのしかかっていた大きな石もようやく下ろせたわ。」