彼女の心臓はまだ激しく鼓動していた。その一つ一つの強烈な震えが、胸全体を揺さぶっていた。
激しい頻度と力で、まるで胸を引き裂かれそうだった。
彼女は急いで胸に手を当て、先ほどの蜻蛉返りのような軽いキスを思い出し、顔がますます熱くなった。
これが彼女にとって初めて男性に積極的にキスをした経験だった。
彼女は以前、こんな大胆なことをしたことがなかった。
蘇澤との恋愛関係でも、いつも蘇澤が主導権を握っていた。
さっきも何がどうなったのか、突然そうしたくなったのだ。
今思い返すと、とても恥ずかしく感じる。
彼女の勇気も衝動も、ほんの一瞬のことだった。
今もし、さっきの時間に戻れたとしても、きっと墨夜司に積極的にキスする勇気はないだろう。
*
車の外で、喬綿綿は顔を赤らめ、心臓がドキドキし、胸がときめいていた。
車内では、キスされた人がまだ呆然としていた。
墨夜司は喬綿綿にキスされた姿勢と表情のまま、動かずにいた。
ほんの軽い触れ合いにすぎない浅いキスで、正確に言えば、さっきのキスは本当の「キス」とも言えないものだった。
ただお互いの唇が触れ合っただけで、それだけだった。
しかし、そんな所謂「キス」でさえ、墨夜司をしばらく呆然とさせた。
彼は世間知らずの若者のように、しばらく我に返れなかった。
頭の中で、さっき喬綿綿が彼にキスした場面が繰り返し浮かんでいた。
彼女はもともと恥ずかしがり屋で臆病な女性だった。
さっきのような行動ができたのは、きっと勇気を振り絞ったのだろう。
これは喬綿綿が初めて彼に積極的にキスした出来事だった。
このキスは墨夜司にとって、特別な意味を持っていた。
丸一分後、やっと彼は顔を向け、唇を曲げ、深い眼差しで車窓の外を見た。
長く美しい指が唇に触れ、さっきキスされた場所を撫でながら、目に楽しげな微笑みが浮かんだ。
助手席に座っていた喬宸はバックミラーを通してさっきの一部始終を見ていて、驚いて口を開けたまま、今見たのが本当に姉なのかと疑うほどだった。