彼女の隣に座っていた言少卿の表情がわずかに変わり、眉をひそめた。
宮澤離は唇を引き締め、「ガチャン」とグラスを置いて立ち上がり、冷たく言った。「トイレに行ってくる。」
そう言うと、素早く個室を出て行った。
言少卿は沈柔を見て、それから墨夜司と喬綿綿を見て、眉をさらに寄せた。
さっきまでは喬綿綿の推測に過ぎなかったが、沈柔がこんなことを言った後では、彼女の推測が間違いなく正しかったことを確信した。
沈柔は確かに故意だった。
喬綿綿はゆっくりと、沈柔が最初に彼女に向けた敵意の理由が何だったのかを理解し始めた。
彼女は...墨夜司のことが好きなの?
それ以外の理由は思いつかなかった。
でも墨夜司は知らないようだった?
喬綿綿は無意識に隣の人を見たが、墨夜司も振り向いて彼女を見ていた。
目が合うと、彼は唇に優しい笑みを浮かべ、彼女の手を取って柔らかく尋ねた。「お腹すいた?何か食べたいものある?」
「私...」
喬綿綿が答える前に、彼はウェイターにメニューを持ってくるよう頼んだ。
「自分の好きな料理を何品か選んで。」墨夜司はメニューを彼女の手に渡した。「今夜は言三のおごりだから、遠慮しないで高いのを選んでいいよ。」
言少卿:「...」
やはり女房ができたら兄弟を忘れるんだな。
色に目がくらんだやつめ。
喬綿綿:「...」
墨夜司は彼女がぼんやりしているのを見て、また手を伸ばして彼女の頭を撫でながら、甘やかすように言った。「僕の分も一緒に選んでくれる?」
「えっと...」
喬綿綿は向かいの顔色が少し青ざめた沈柔をちらりと見て、唇を噛みながら小声で言った。「沈柔があなたの分を選んだんじゃないの?私、あなたが何を好きかわからないし。」
彼女には墨夜司も故意にやっているように思えた。
沈柔があんなにたくさん言ったのに、彼は一言も返さなかっただけでなく。
今度は彼女に料理を選ばせようとしている。
これって沈柔の顔に泥を塗るようなものじゃない?