墨夜司は深く息を吸い、彼女の腰に巻き付けた腕を引き締めた。彼の沙哑で低い声には抑制と我慢が込められていた。「ただ抱きしめて寝たいだけだ。他のことはしない。でも、もしあなたが私の腕の中でもぞもぞし続けるなら、我慢できなくなるかもしれないぞ。」
一瞬にして、喬綿綿は怖気づいて彼の腕の中でおとなしく横たわり、もう動かなくなった。
頭上から、男の呼吸が最初は少し急になり、1分後にゆっくりと落ち着いてきた。
優しいキスが、そっと彼女の額に落とされた。
墨夜司は腕を引き締め、少女の髪から漂う淡い香りを嗅ぎながら、満足そうに目を閉じた。「ベイビー、眠りなさい。」
彼女の体の香りが彼の全身をすっかりリラックスさせた。
以前は毎回寝る前に、特に苛立ちや不安、心の落ち着かなさを感じていた。
脳内の神経の一本一本が緊張して張り詰めていた。
毎晩の入眠過程は、体内のもう一人の自分と戦っているようだった。
勝敗に関わらず、最終的には彼は暗黒の世界に引きずり込まれていた。
それは光明が見えない世界で、目に入るのは果てしない闇だけだった。
毎回目覚めて、その暗黒の世界から現実に戻ってくると、特に疲れを感じた。
心身ともに疲れ果てていた。
彼は医者に診てもらったことがなかったわけではない。国内外、世界最高の心理医を全て試したが、それでも20年以上彼を悩ませ続けた悪夢から逃れることはできなかった。
最後には、彼も諦めていた。
一生悩まされ続けるつもりでいた。
そんな時に、喬綿綿が現れたのだ。
彼女は彼にとって予想外であり、喜びでもあり、さらには水に沈む人が必死で掴んだ浮き木でもあった。
彼女は彼の救世主だった...
もし彼女に出会わなければ、彼はこの人生をただ過ごすだけだっただろう。
しかし、彼女が既に彼の人生に現れ、彼が彼女を見つけた以上、この人生では、どんなことがあっても、もう手放すことはできないのだ。
*
翌日。
喬綿綿が目覚めると、隣の位置は空っぽだった。
彼女は目をこすりながら起き上がり、携帯を手に取って確認すると、墨夜司から何通かのメッセージが届いていた。