「生徒を退学させるどころか、彼の一言で校長さえも交代させられるんだ。」
「でも盛輝の方は……」
魏徵は少し考えてから、正直に言った。「墨社長、盛輝は有名な中堅企業で、規模も小さくないし、売上の面でも問題はありません。突然買収の話を持ちかけても、盛輝側は乗り気ではないでしょう。」
墨夜司が顔を上げ、冷たい光を湛えた瞳で魏徵を見たとき、魏徵はたちまち言葉を失った。
「君の言う通りなら、墨氏が会社を買収したいと思っても、相手の意思次第で買収できないということになるのか?」
魏徵はこの言葉を聞いて、肝を冷やし、慌てて言った。「墨社長、そういう意味ではありません。」
墨夜司は目を細め、「バン」と音を立てて書類を机に叩きつけ、一言一言冷たく言った。「乗り気でないなら、盛輝の株を空売りして、直接盛輝を破産させればいい。そうすれば、彼らの方から墨氏に買収を懇願してくるだろう。」
魏徵の目に驚きの色が浮かんだ。
盛輝の株を空売り?
それにはかなりの金額を投じる必要があるだろう。
墨氏にとってはそれほどの金額でもないかもしれないが、買収の本来の目的は利益を上げることのはずだ。
しかし、墨社長のこのやり方では、全く利益を目指していない。
これでは損をするはずだ。
彼は墨社長の側で何年も働いてきたが、墨社長が損をする取引をするのを見たことがない。
これは本当に前代未聞のことだ。
魏徵は、墨社長が最近行っている全ての異常な行動が、若奥様に関係しているように思えた。
今回も、若奥様に関係しているのではないだろうか?!
「……はい、墨社長!」
魏徵は疑問でいっぱいだったが、上司が命令を下した以上、従うしかなかった。それ以上何か聞くことなどできるはずがない!
墨社長が盛輝を破産させろと言えば、盛輝は破産しなければならない!
天が涼しくなろうとなるまいと!
*
翌日。
喬綿綿は沈月月と趙婉婷が学校から退学させられたことを聞いた。
性質が悪質だったため、全校に通達された。
同時に。
その日の午後、各経済ニュースチャンネルは盛輝グループが一夜にして破産したことを報じていた。盛輝の株価が一夜のうちに暴落し、救済の機会さえないほど速かったという。