Chereads / ゾディアック : 永遠の約束の残響 JP ver. / Chapter 2 - First Loop, Chapter 2 : 砕けた地平線

Chapter 2 - First Loop, Chapter 2 : 砕けた地平線

日々は週に変わり、ダイチは荒廃した都市や終わりのない荒野を歩き続けた。彼の一歩一歩には、機械のコアから微かに響く音が伴い、それが彼の人間でない存在を常に思い起こさせた。太陽は高く昇り、青白く病的な光を放ちながら、壊れた遺跡を這う影を追い払うことなく照らしていた。

「世界が壊れたみたいだな…」ダイチは自分に呟いた。疲れた声は低く、重かった。その音は空っぽの通りにかすかに反響し、ほぼすぐに圧倒的な静けさに呑み込まれた。

彼は立ち止まり、霧のような空気を貫くように青く光る目で周囲を見渡した。崩れかけた建物が不安定に傾き、その基盤は割れ、地面がそれを拒絶したかのようだった。風が壊れた窓を通り抜け、腐敗した金属のような臭いを運んでいた。

「昼も夜もない…」ダイチは呟きながら、崩れた瓦礫を蹴った。それが転がり落ちる音が虚無を一層深めた。「ただこの終わらない何もない世界。」

時間はもはや意味をなさなかった。日々は耐え難く長く感じられたが、それは一瞬で消え去り、後を追うように圧倒的な闇に飲み込まれた。夜には星も月もなく、ただ終わりのない息苦しい黒が広がり、生きているかのようにダイチを見つめていた。

彼は前に進み続けた。一歩一歩は安定しているが、疲れた肉体の重さはもう感じていなかった。胸の奥深くから響く、柔らかくリズミカルなハム音が彼の命の支えとなっていた。それは食べ物、水、睡眠の代わりとなる奇妙で異質なエネルギーだった。それでもその振動は不完全で、何か足りない部分を常に思い起こさせた。

ダイチは手を胸に当て、機械的な空洞のふちに指を触れた。そこに感じた空虚さは物理的なもの以上だった。それは安らぎを与えない、しつこい虚無だった。

「俺は…何を失ったんだ?」彼は空っぽの空気に向かって呟いた。静寂はいつも通り、何の答えも返さなかった。

だが、世界は完全に死んでいるわけではなかった。時々ダイチはそれを望んだが。ここにはまだ命が息づいている。しかしそれは歪み、グロテスクで、かつての姿の歪んだ反映にすぎなかった。彼はそれら、荒廃した遺跡を徘徊する生き物たちに出会ったことがあった。

その記憶に身震いが走った。

それは終わりのない黄昏の間に起きたことだった。病的な太陽の光が長く、ぎざぎざした影を作り出していた。最初に耳にしたのは低いうなり声、深くて不気味な音だった。それが背筋を凍らせ、恐怖を呼び起こした。

振り向いた時、そこにはいた。影のような獣たち。彼らの手足は本来の形ではなく、伸びきっていて、曲がるべき場所で曲がらなかった。その目は不自然な赤に光り、壊れた炭火のようにチラチラと光っていた。彼らは途切れ途切れに動き、その姿は時間の中で足踏みしているかのように、ぼやけてひきつっていた。

ダイチは廃墟から拾った鉄パイプを握りしめ、指の関節が白くなるのを感じた。

「近づくな…」彼は震える手を抑えながら、冷静に言った。

獣たちは彼の周りをぐるりと回り、歪んだ姿がぼやけたりはっきりしたりした。うなり声が大きくなり、より獣らしく響き、死んだ空気を震わせた。

最初に飛びかかってきたものは信じられないほど素早かった。その伸びた手足は鞭のようにダイチに向かってしなった。目が彼に向かってギラリと光った。ダイチはほとんど反応する暇もなく、本能だけで動いた。その動きは驚くほど速く、正確だった。彼は獣の攻撃をかわし、パイプを全力で振り下ろした。

金属が骨のない影にぶつかる音が響き、獣は地面に倒れ込み、その歪んだ姿が瓦礫の中を滑って消えていった。

他の獣たちはためらったように動きを止め、光る目が細められた。まるで彼の反応を考えているかのようだった。それから一匹ずつ、彼らは暗闇の中に戻っていった。その姿は煙のように消えていった。

しばらくダイチは動けずに立ち尽くした。胸が早鐘のように激しく上下していた。コアのハム音は速くなり、彼の胸の中で二つ目の鼓動のように響いた。

彼はパイプを握り直し、手が痛くなるまで力を込めた。光る目で空っぽの通りを見渡したが、獣たちはもういなかった。

彼は震える息を吐き出し、体の緊張が解けないままでいた。

「お前たちは何だ?」彼は静寂を破るように呟いた。それは獣たちに対する問いだけではない。自分自身に向けた問いでもあった。

風がそれに応えるように、遠くで錆びた金属のうめき声が響いた。

ダイチは膝をつき、鉄パイプが地面に落ちる音を聞いた。その手は再び胸に触れ、空洞のふちを震える指でなぞった。

空虚さ。虚無。そこにあるのは胸だけではない。それは世界に、呼吸する空気に、組み立てられない記憶に満ちていた。

「俺は…何なんだ?」

その問いは空気の中に浮かび上がり、答えは返らなかった。彼の声は裂け、疲労と絶望の重みを抱えていた。

静寂は再び彼を呑み込んだ。

その時、何かが目に留まった。

倒れた木の梁の下に半分埋もれているのは、ひとつのジャーナルだった。革の表紙はひび割れ、縁は焼け焦げているようで、まるで火事からかろうじて逃れたかのようだった。ダイチは慎重にそれを引き抜き、埃や瓦礫を払い落とした。手に取ったそれは、奇妙なほど重要な意味を持っているように感じられた。

ページは脆弱で、インクはにじみ、色あせていた。しかしダイチがページをめくると、過去からのささやきのように、文字が断片的に現れた。

「失踪事件が加速している。なぜ、どうしてかは分からないが、町ごと消えていく。議会は解決策を見つけることを強く求めている。時間がない…」

ダイチは息を呑んだ。ページをめくる手がわずかに震え、コアのハム音がほんの少し大きくなる。

「私たちはプロジェクト・リバースに希望を託した。最悪の事態が起きたら、それが最後のチャンスだ。」

彼はその言葉をもう一度読み返し、光る目を細めながらその意味を理解しようとした。失踪事件? 町ごと消える? プロジェクト・リバース? その言葉はどこか遠く感じる一方で、まるでかつて知っていた何かの響きのようにも思えた。

「プロジェクト・リバース…」ダイチは小さな声で繰り返した。その名前は忘れ去られた秘密のように口から滑り出し、断片的な記憶の端を引っ張った。胸の中で微かなハム音が響き、その振動はほとんど不気味なリズムのように共鳴した。

彼の思考は急速に動き出し、断片的な記憶と考えが組み合わさっていった。これを記した者たちは、彼らが予見していた世界の崩壊を目の当たりにし、何かを試みていた。何か、それが世界を救うと信じて取り組んでいたのだ。

そして、何故かダイチは、それが自分に関係しているように感じた。

「これは何か意味があるはずだ。」彼はジャーナルを胸に強く抱きしめながら呟いた。光る目を閉じると、コアのハム音が少し強くなる。まるで彼の頭の中を渦巻く思考に反応しているかのようだった。「これを書いた人たち…彼らは戦おうとしていたんだ。これを直そうとしていた。もしかしたら、僕を直そうとしていたのかもしれない。」

外の崩れた街並みから、影の獣たちの遠吠えが響き渡る。低く、咆哮のような音が空気を震わせ、寒気を感じさせた。夜は予告もなく訪れ、荒廃した世界を圧倒的な闇で呑み込んだ。

ダイチは壊れた壁に背を預け、目を砕けた窓に向けた。月明かりがほのかに図書館の荒れ果てた残骸を照らし、彼の視界の隅で長い影が踊っていた。

彼はジャーナルを慎重に肩掛けのバッグにしまった。これは前の旅で拾った、使い古された革の袋だった。この無気力な世界で、これが自分の所有物のように感じられる数少ないものの一つだった。

「明日だ。」彼は呟き、疲れがにじむ一歩一歩を踏みしめながらも、決意に満ちた声を発した。崩れた天井を見上げ、答えのない疑問が頭の中で渦巻いているのを感じながら。 「明日、真実を探し始める。」

再び風が遠くでうなるように響き、壊れた世界の軋む音を運んでいた。ダイチは目を閉じ、コアのハム音に身を任せるように、休まることのない眠りに落ちていった。しかし、眠りに落ちるその瞬間でさえ、ジャーナルの言葉は彼の頭の中で響き続け、壊れたレコードのように繰り返された。

プロジェクト・リバース。彼らの最後のチャンス。 そして、もしかしたら…彼の最後のチャンスでもあったのかもしれない。