コンソールルームは微かな、ほとんどリズミカルなエネルギーで震えていた。何世紀もの間眠っていた機械たちが目を覚まし、その眠っていた光が、まるで何かを待っているかのように瞬きを始めた。
しかし、施設が静かに目覚める中、泉が集中できるのは、大地の手のひらに抱かれた小さな輝く物体、子供の手のひらほどの大きさの鍵だけだった。
それは微かに脈打ちながら、金色の光を放ち、まるで鼓動のように輝いていた。大地がそれに触れると、温かさが体中に広がり、何世紀も感じたことがなかったような感覚が胸に広がった。それは単なる物理的な温もりではなく、もっと深い、彼の魂の欠片にささやくような感覚だった。
泉は彼の横にひざまずき、輝く目をその鍵に固定した。彼女は一瞬ためらい、隠されたコンパートメントの端に指を触れた。「これが…それなのね」と、彼女の声は柔らかく、でも感情に満ちていた。その鍵の光が涙で濡れた彼女の目に映った。「私たちがここまで来たのはこれのためだったのね。」
大地は頷いたが、その表情には迷いが見えた。鍵の微かな光が彼の顔を照らし、その影が彼の中の葛藤を映し出しているようだった。「うん。これだ。」彼は静かに、でも決然と言った。
泉の視線は彼から離れなかった。「準備はできている?」
彼はすぐには答えなかった。代わりに、その鍵を手の中で回しながら、その重さを感じていた。それは物理的に重いわけではなかったが、その責任感が圧倒的だった。ついに彼は頷き、胸の中が息苦しく感じるように感じながらも言った。「僕は…しなければならない。もう引き返せない。」
空気が変わったように感じた。機械の微かなハム音が徐々に大きく、そしてしつこくなり、部屋全体が、その先に待つ重さを理解しているかのように感じられた。
大地は立ち上がり、鍵を胸の中の空間、長い間彼を苦しめてきたその場所に近づけた。指は震えたが、彼の決意は揺るがなかった。
「大地。」
泉の声で彼は振り向いた。彼女は数歩離れたところに立ち、拳を握りしめていた。表情は恐れ、怒り、悲しみでいっぱいだった。「本当にこれでいいの?」と、彼女の声は震えていた。
大地は輝く目を優しく細め、彼女を見つめた。「これしかないんだ。」彼は優しく言った。「もし僕が人類を復活させられるなら…もう一度チャンスを与えられるなら…僕たちが耐えてきたことは全部意味がある。」
「でも、あなたは?」彼女は声を荒げ、震える手で一歩踏み出し、彼に向かって言った。「あなたはどうなるの、大地?私たちには?」
大地の唇は小さく切ない微笑みを浮かべた。「僕がどうなっても構わないんだ。」彼は言った。「大事なのは、世界がやり直すチャンスを得ることだ。癒しを得るチャンスだ。」
泉の冷静さが崩れた。「いや。」彼女は首を振り、涙が顔を伝って落ちた。「違う、あなたは大事だ。あなたがいなくなったら—」
彼女の声がかすれ、唇を噛みながら震える拳を握りしめて、自分を保とうとした。
大地は手を伸ばし、優しく彼女の肩に手を置いた。その温もりは、彼女の胸の中の痛みを一層強くしたが、同時に安心感を与えた。「君は思っているより強いんだ、泉。」彼は静かに言った。「僕は君を信じてる。君は乗り越える。進み続けるんだ。」
その言葉が彼女を打ち砕いた。彼女は叫びたかった、反論したかった、他の方法を見つけてと頼みたかった。でも、心の奥では、彼女は彼がもう決して引き返さないことを知っていた。彼女は彼の目に見た決意を、二人が共に乗り越えてきたすべての試練の中で育まれたその静かな決意を知っていた。
鍵は胸の空間に静かな機械的な音を立てて収まった。その瞬間、世界が止まったかのように感じられた。
そして、部屋は眩い光に包まれた。
大地の胸から放たれた光が急速に広がり、部屋全体を異世界のような輝きで満たした。周囲の機械のハム音は耳をつんざくような音量に達し、壁や床を振動させた。空気そのものが生きているように感じ、エネルギーがはじけていた。
「大地、やめて!」泉は目を守るために手をかざしながら叫んだ。彼女は前に進み、必死で彼に近づこうとしたが、見えない力が彼女を引き戻した。「お願い、他に方法があるはずよ!」
大地は首を横に振り、混乱の中でもその輝く目は穏やかだった。彼の声は揺れていたが、確かな感情が込められていた。「ないんだ。これが僕が作られた理由だ、泉。これこそが僕たちがずっと探していたものだ。」
「いや!」泉は叫び、声が震えた。涙が顔を伝い、彼女は二人を隔てるバリアに立ち向かおうとした。「あなたはそんなことをしてはいけない!私を置いていかないで!」
大地の姿は揺らぎ始め、彼の体が光の粒子として溶けていった。彼は最後に泉を見つめ、その目は深い温かさで満たされていた。
「泉。」彼は囁いた、その声は柔らかく、感情で満ちていた。彼は薄れゆく手を彼女に向かって上げ、彼女の頬にその手をかすかに触れた。「ありがとう。すべてに。君がいてくれたから。僕は君なしではこれを成し遂げられなかった。」
泉は彼に手を伸ばし、震える金属の指でその手を握った。「大地。」彼女は涙で声が詰まり、悲しみの重さに声が割れた。「お願い…行かないで。」
大地の微笑みは変わらず、わずかだが確かなものだった。「彼らを救って。」彼の声はかすかに聞こえた。「僕のために。」
そして、彼は消えた。
彼の胸から放たれた光は外へと広がり、施設全体、そしてその先へと波のように伝わった。周囲の機械のハム音は次第に大きく、やがて静まり、ついには沈黙に包まれた。
泉は膝をつき、彼が立っていた空の場所を手で握りしめた。部屋は静まり、彼女のすすり泣きだけがわずかに響いていた。大地の存在の温もりはまだ残っていたが、それはすぐに消えていった。まるで歌の最後の音のように。
彼女は空っぽの部屋を見つめ、冷たい金属の床に涙が静かに落ちるのを感じた。胸がいつも以上に重く感じたが、静けさの中で彼女は彼の最後の言葉にしがみついた。
「彼らを救って。僕のために。」
突然、彼女の意識は奪われた。
「どうしてまぶたが重くなるんだろう」と彼女はささやき、意識を失う直前に言った。