"ヨウコちゃんですか?行きたかったら行けばいいのに、一緒に食事をするくらい時間はそれほどかからないわよ。"冬美は北原秀次が何をためらっているのか理解できませんでした。彼らは修学旅行に行くわけで、労働改革に行くわけではないのですから。一日中の時間とは言わないまでも、2-3時間は十分にあるでしょう。
北原秀次は軽く笑いました。「その時になったら見てみるよ」
彼は以前、陽子が連れ去られるのが惜しかった。その時は少々私欲があって、陽子を連れて逃げることさえ考えていました。人間は行動が評価され、心が評価されるわけではなく、完璧な人などいません。たまには私心を持つことも普通のことです。しかし、最終的に彼は陽子を神楽家に渡しました。そして幸運にも、陽子が神楽家での生活に満足しているようです。
もし陽子が困難な状況にいたら、彼は当然のことながら手段を尽くし、必死になって陽子を取り戻さなければなりません。しかし、今では彼女は幸せな暮らしをしている...彼女の生活を邪魔する必要があるのでしょうか?
なにしろ、彼女は10歳まで非常に厳しい生活を送っていた。自分が現れることで、彼女が過去の辛い思い出を再び思い出し、彼女が小野陽子、つまり私生児であることを思い出し、最初から神楽ヒマワリとして生きてきたお嬢様のような自信に溢れた存在ではないことを思い出させてしまうのではないかと心配です。
やはり互いに助け合うよりも、互いに忘れ去ることが最も宜しいだろうと......
冬美はまだ少し混乱が残っていて、さらに質問しようと思った矢先、斜後方から声が聞こえました。「北原、福泽、静かにせずにみんなの休息を邪魔するな。礼儀を守り、剣道部の名前を汚すな!」
北原秀次は眉を微かにほころばせ、すぐに後ろを振り向きました。
今回の特別修学旅行に参加するのは、北原秀次たちの新しく組織されたクラスだけでなく、2年生も一団として同行しています。その中には、彼がかつて剣道部で「先輩」だった、玉竜旗を奪う試合時の「チームメイトでキャプテン」であった小由紀夫がいます。恐らく学園はこのような機会は滅多にないと考え、学力が優れている2年生達も一緒に行き、これを励みにしようとしたのでしょう。