"北原秀次は素敵な夢を見ていた。夢の中はミルクの香りに満ちていて、その香りがどんどん濃くなり、甘さが少し気持ち悪くなるほどだった。さらに、頬がチクチクとかゆい感じがする。彼はゆっくりと目を開けると、既に明け方だということが分かる。通りにも少しだけ人々の声が聞こえてくる。そして、わずかに首を傾けると、冬美が彼のベッドの隣で寝ているのを見つける。二人の頭はぴったりとくっついていた。
彼はゆっくりと身体を動かし、自分の頬が冬美の頭から離れるようにした。香りに引きつけられて、頭が冬美の方に向かっていったのかもしれない。彼が動いたことで冬美はすぐに目を覚ました。目をこすりながら彼を見つめ、何も考えずに手の甲で口を拭いて、「どうしたの?」と呆然と聞いた。
二人の距離は非常に近く、お互いの息遣いが聞こえるほどだ。北原秀次は冬美の星のように輝くつぶらな瞳をしばらく見つめ、やわらかい声で言った。「何もない、引き続き寝てて、お疲れ様だったよ。」
冬美はちょっと呆然としてそして座り上がり、首を傾げて「何でもない、私がしなければいけないことだから。」と言い、北原秀次が起きようとするのを見てすぐに押さえて止めた。「今日はもう一日休んで、起きなくていいよ。」
「でも、起きなければ……」
「だめ、もう少し寝て!」
「でも、起きなければなりません。」北原秀次は無念そうに言った。「トイレに行かなければなりません。」"
"冬美は少し呆然とした後、顔を赤らめて急いで彼を支えて立ち上がらせ、彼が転ばないように慎重にそれに続いて歩く。北原秀次はすでにかなり楽に感じており、自分で浴室までゆっくり歩いていった。一方、冬美は外で待っていた。
北原秀次が出てきて彼女を見て、再度提案した。「本当に大丈夫だから、もう少し休んでてね。」
冬美は首を振りながら彼のそばに立って、「ダメだよ。雪里があなたを傷つけたから、私が責任を負わなくてはいけない......」と言い始め、「あなたの世話をするのは私も望んでいないけど、仕方ないの。もう少し無口になって、早く良くなることが一番だよ。」と落ち着きを失っていた。