この時の場面は、まるで昔の決戦のようだった。二人はそこに立ち、意識で戦っていた。
「あー、紹介するわね。彼が冰心の彼氏の夏天よ」葉清雪が二人の間に来て言った。「彼は高富帥。冰心の幼なじみの親友よ」
「おお、幼なじみの親友ですか。よろしく」夏天は友好的に右手を差し出した。
高富帥も右手を伸ばし、夏天の身体を一通り見回してから言った。「男として、何か特技はあるのか?」
二つの手が握り合った時、夏天は高富帥が力を込めているのを感じた。
「遊びたいなら付き合うよ」夏天は口角を少し上げ、彼も力を入れた。彼が力を入れるや否や、高富帥の顔色が青ざめた。夏天の手にこれほどの力があるとは思わなかった。自分の手が夏天に潰されそうだと感じた。
しかし、彼も男だ。必死に声を出さないようにした。
「あいたっ、痛いよ」夏天は右手を引っ込め、大げさに叫んだ。
「高富帥、何をしているの?」冰心は急いで駆け寄り、自分の玉手で夏天の手をさすった。
夏天は非常に哀れそうに言った。「大丈夫だよ。高さんはただ僕の握力を試したかっただけさ。力加減を間違えただけだよ」
「高富帥、警告するわ。夏天を傷つけたら許さないわよ」冰心は怒って高富帥を見た。
「俺は…」高富帥は今、言いたくても言えなかった。実際に傷ついたのは自分なのに、夏天は哀れな振りをしている。自分が悪かったのだ。人の握力を試そうなんて余計なことをして。
「もう帰ってよ。約束した通り、あなたの試合は見に行くわ」冰心は直接追い払った。
「ええと、わかった」高富帥は非常に不機嫌そうに背を向けて去った。
高富帥が文芸部を去るのを見て、葉清雪は勝利の笑みを浮かべた。夏天と冰心が手を繋いでいるのを見て言った。「もう離してもいいわよ。まだ足りない?」
冰心は急いで自分の手を引っ込めた。
「夏天、よくやったわね。俳優にならないなんてもったいないわ」葉清雪は褒めた。彼女は夏天の実力を知っていたので、損をするはずがないと思っていた。
しかし、さっきの演技は本当に見事だった。
「さっきは演技だったの?」冰心はやっと気づいた。さっきは本当だと思っていたので、あんなに怒ったのだ。
「あなたが気づかなかったなんて、当事者は見えないものね」葉清雪は感心した。