目の前の男性は温厚で優雅で、吊り上がった桃花眼をしており、その顔立ちにも知的な雰囲気が漂っていた。話す時の口調には少し変わったところがあった。
寺田凛奈はとても不思議に思った。
彼らはまだ2回目の対面だったはずなのに、この人はもう彼女のプライベートな生活に関心を持ち始めているのだろうか?
彼女は何となくこの人に親近感を覚えていたが、それでもこういったことを話すのは面倒くさかった。杏色の瞳を少し上げ、冷たく言った。「寺田さんは余計なことを気にしすぎているようですね?」
以前彼を見たときは、この人はいい人だと思っていた。
でも木田柚凪をいじめた人が彼の妻だと知ってからは、寺田凛奈は気分が悪くなった。
彼女はそのまま立ち去った。
寺田真治は彼女の後ろ姿を眉をひそめて見つめ、思わず彼女の後を追いかけた。「寺田さん、注意させていただきますが、藤本さんには子供がいるんですよ!」
寺田凛奈:?
彼女は振り返り、眉を上げた。「それで?」
寺田真治は長い間沈黙した後、やっと苦笑いをした。「私の知る限り、藤本さんは子供の母親と結婚するつもりです。あなたがそんな風に彼らの間に入るのは、あまり良くないと思いますが?」
「子供の母親?」
「そうです。子供にはやはり母親が必要です……」寺田真治は苦しそうにこう言った。
当時、真由美には母親が必要だと思い、自分も再婚する予定がなかったので、堀口泉弥を家に入れることを許可したのだった。
今考えると、全然そういうことではなかったのだが。
寺田凛奈は彼がこんなにも悩んでいるのを見て、何かを理解したようだった。彼女は眉を上げ、唇の端をつり上げた。「あなたの言う子供の母親というのは、木田柚凪のことですか?」
寺田凛奈も木田柚凪の存在を知っているようだった。
寺田真治はうなずいた。「そうです。」
寺田凛奈が藤本凜人と近づきすぎると、木田柚凪の性格からすると、きっと悲しんで苦しむだろう。でも、もしかしたら子供のためなら、我慢して妥協するかもしれない?
だから、一番良い方法は寺田凛奈に自ら退くよう促すことだ。
そうすれば木田柚凪のためにもなるだろう。