……
陰影の中、アビンが物音を立てず進む。
階段の入口。
マシューたちは静かに階段を上って行く。
今はすでに夜で、二つ下の階のライトは明るく点灯されている。
彼らは階段の入口近くでわずかに見える光景を頼りに、ここがキッチンであることを見抜いた。
ただ、このキッチンはかなり乱雑で、ゴミや厨房用具が散乱している。
数匹のネズミが道すがら堂々と歩いていく。
少しして
マシューの死霊契約から、アビンの異常な感情が伝わってきた。
“主人、何かおかしいようです。”
マシューの心が動いた。
何かをしようと思った矢先、レイガはすでに鏡を取り出し、階段口に向けて照らした。
一瞥しただけで、二人の顔色が愕然と変わった。
キッチンの真ん中には一つの巨大な人影が立っている。
それは二頭の食人鬼だ!
この食人鬼は二つの頭を持っていて、その姿はほぼ同じだ。ただ左側の頭部の毛は赤く、右側の頭部の毛は青い。
その時、彼らは激しく口論を闘わせていた。
赤い毛の方が怒って叫んだ。
“お前が先に答えろ、なぜいつも右足から踏み出すんだ?”
青い毛は負けじと戦った。
“それは私が右足を制御できるからだ。左足はいつもお前が制御しているじゃないか。 あんた自身が遅れたのに、私のせいにするか?さあ、私に言ってみて。なぜ唐辛子を入れないんだ?”
赤い毛は冷笑して言った。
「だって上座の連中が最近、下痢気味だからさ」
「夜中のその音、聞こえないのか?あ、そうだな、お前は毎晩、死んだ豚みたいに爆睡して、むさ苦しいいびきで何晩も俺を眠らせてくれないから。聞いたところで、お前、理解できないだろう――
お前の頭の中が俺の半分だけでも賢ければ、俺たちはここに閉じ込められて誰かの料理人をやってることはなかったんだよ!」
青い毛は驚いた顔をして聞いた。
「彼らって魔法使いだろ?魔法使いがお尻のトラブルを治せないなんて...」
赤い毛がまたもや笑った。
「私だって魔法を使えるけど、でもお前の脳みそのバカを治せないだろ?」
青い毛は少し怒り始め、他の頭部を強く突いた。
「おい、アルヴ、そんな言い方を許さないぞ。俺はお前の実の兄だからな。」