死者の痕跡の事件が一段落した後、マシューは他の事柄にも力を注ぐ余裕ができ、日々木を植えること、魔法の勉強、仕事をさぼること以外にも、彼は二つのことを行った。
最初のことは五月の上旬に起こった。
「深海の謎」という名前の魔法アイテムショップがローリングストーンズタウンの北の貿易ステーションで公式に開業した。
この店は店名だけでなく、店先には超大型の広告スローガンも用意した──。
「水中呼吸薬剤、大好評販売中!ナーガが使ったらすごく良かったって!」
巨大なスローガンと奇妙なキャッチフレーズはすぐに多くの人々の注目を引いた。
というのも、開業初日には、風の便りで来た商人やぶらついている人たちが入口を踏みつけたという噂もある。
しかし、一日賑やかに営業したにも関わらず、棚の上の薬剤は一本も売れなかった。
ほとんどの人たちはただ見物に来ただけで、たぶん何か小物を買う気があったかもしれないが、棚の上には水中呼吸薬剤とそれよりも高級なカエル人の薬剤しかなく、買えるアイテムの種類も少なく、販売されている商品の単価も高額だった。
だから、開業初日の客足は一つの売上にもつながらなかった。
しかし、「ナーガが使ったらすごく良かったって」のジョークは、訪れる人々の飲み物や食事の話題としてスムーズに広まった──。
ナーガが水中呼吸薬剤を必要とするだろうか?
答えはもちろん、否定だ。
このことについて店員をからかう人がたくさんいたが、店員たちは冗談好きの人たちにからかわれて顔を赤くする一方で、自分たちの薬剤がナーガに認められていると主張し続けた。
だってローリングストーンズタウンは内陸地域にあるんだから、ナーガたちが反論する機会もないだろう?
北の貿易ステーションは、主に激流城、翠玉苍庭、および北部の各都市の商会のために建設されたものだ。
すぐに。
このジョークは北方に広まった。
そして数日後。
二人の魔法使いがわざわざ訪ねて来て、この店の水中呼吸薬剤の品質が驚くほど高いことを確認し、さらに驚くべきことに、その価格が普通の販売価格よりも少し安かった。
そこで、その二人の魔法使いはその場で店の在庫を一掃しようとした。