……
階下の大ホールにはいくつかの席に人影が散在している。
マシューを見つけると、ホテルのオーナー、トゥルーゴがすぐに熱心に声をかけた。
「大丈夫?今朝、あなたの部屋の前を通ったとき、凄まじい臭いがした。僕が聖水を買ってきてやる必要はあるか?」
マシューは微笑んで首を振った。
「もう大丈夫です、トゥルーゴさん。今は元気ですよ」
トゥルーゴは驚いてマシューを見た後、すぐに大ホールの一角を指して言った。
「あなたが求めていたガイドが見つかったよ。ほら、あの人が老吉頭。アシ水城で一番のガイド。彼が雨林を78回無傷で通り抜けたんだ。リーウィチがアル海に行ったときも、彼が道案内をしたんだから」
マシューは何も言わずに目を向けると、黒い肌の無口な老人がいた。
彼は50代後半から60歳くらいに見えた。髭は薄白く、目つきは鋭く、今は静かにテーブルに座って乾パイプを吸っていた。
マシューの視線に気付いた彼は、ほんのりと頷いた。
「マシュー、あなた、気をつけて。その人、何人もの命を奪っているんだから」
マシューの胸元が突然膨れたのは、アイラが襟から顔を出して注意を喚起したせいだった。
マシューは頷いて了解の意を示した。
しかし、彼は特に気にしていなかった。雨林を幾度も無事に横断できる人間が善人だとは思えない。
それに、マシュー自身も、多くの命を奪ったことがある。
そこで、彼は堂々と近づき、右手を差し出した。
「こんにちは、ガイドさん」
老吉頭は彼を一瞥し、パイプを別の方向に向け、煙を一つ吹き出した後、首を振って言った。
「僕のことを老吉頭と呼んでくれればいい。それと、若者、君に一つ忠告をしておく。このアシ水城では、適当に人に手を差し出すな。普通の人は握手なんてしない。握手してくる人は大抵、ペストを移すつもりだからな」
マシューは受け入れる態度を示した。
「わかりました、ありがとう老吉頭」
「トゥルーゴが僕に言ったけど、君はアル海に行くつもりなんだってね?」老吉頭が尋ねた。
「何しに行くのだ?教えてもらっていいか?」
マシューは少し考えた。
「ちょっと散策して、海の風景を観てみたいんです」