「こんな光景は初めて見るのかい?」レイエンは気遣わしげに近づいてきた。「外で新鮮な空気を吸ってきたらどうだ」
「い、いえ...」アーシャはナイチンゲールが既に遺体の傍に屈んで、冷静に傷を観察しているのを見た。こんな血なまぐさい場面でも、彼女はこうして平然としている...自分も頑張らなければ、少なくとも彼女に恥をかかせるわけにはいかない。「私は...うっ...大丈夫です」
「発見されたのはいつだ?」ナイチンゲールが振り返って尋ねた。
「今朝の暁方です。近所の住民が夜明け前に水を汲みに出かけた時に遺体を発見しました。その時ドアはこのように開け放たれていて、まるで誰かに見せつけるかのようでした」レイエンは簡潔に説明した。「以前なら、おそらく二、三日経ってからでないと連絡を受けられなかったでしょうが、最近は市庁舎が通報に懸賞金を出しているので、すぐに市庁舎へ報告がありました」
「被害者の身分は?」
「シャベル、自由民です」レイエンは部屋の中を見回して、「何も持っていない...ええ、以前はネズミだったようです」
「夜中に彼を見かけた人はいるか?」
「聞いてみましたが、いません」
「物音は?」
「それも...誰も聞いていないそうです」
「これほどの大男を殺すのに、何かしら音がするはずだ」ナイチンゲールは眉をひそめた。「喉を切られても即死はしない。床を叩いたり死の間際にもがいたりすれば、かなりの物音がするはずだ。本当のことを話していないんじゃないのか?」
「それは...まさか」レイエンは躊躇いながら言った。「殺人事件が起きて、この辺りの住民は皆不安に思っています。それに、警察の捜査に協力して犯人逮捕に貢献すれば追加の報酬も出るのに、嘘をつく理由がありませんよ」
「そうか。周辺の人々を全員呼んでくれ。私が直接尋問する。それと...アーシャ」ナイチンゲールはアシスタントの方を向いた。
「はい!」彼女は体を震わせた。
「城へ行って、ソロヤを呼んでくるように」
「あ...はい」
アーシャは慌てて部屋を出て、城へ向かって走り出した。
なぜか、ナイチンゲールが指示を出す姿が実に美しく見えた。一挙手一投足に強い自信が漂っていて、殿下が安全の重責を彼女に託すのも当然だと思えた。
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