「今日は私が見た中で一番嘘をついた日だったわね」とタイロが去った後、ナイチンゲールが霧の中から姿を現して言った。
「相手が教会の大司祭だからね」とローランは両手を広げた。「どうだった?相手の嘘を見分けられた?」
「できなかったわ。彼の周りの景色は神罰の石に飲み込まれていて、ただ暗闇の塊しか見えなかった」
大司祭を貴族のように扱えないのは残念だ、とローランは思った。彼は二つの丸薬をテーブルの上に置き、「これは本当に彼らが言うほど素晴らしいものなのかな?」
痛みを和らげるならモルヒネでもできる。兵士を超人的に強くするというのは、アドレナリンの効果のように聞こえる。問題は、これらの物質を抽出して丸薬にする技術が?もし教会にそんな技術力があれば、とっくに世界を征服しているはずだ。
待てよ...ローランは突然ある可能性を思いついた。魔力と関係があるのではないか?
「魔力の流れは見えるよね?」彼はナイチンゲールを見た。「この二つの丸薬に魔力は存在する?」
ナイチンゲールはしばらく注意深く観察した。「魔力は見えないわ。でも、これは神罰の石に似ているわ」
「神罰の石?」ローランは驚いた。
「ええ」彼女は頷いた。「あなたも霧の下の世界を見たでしょう。黒と白の二色だけ。でも、その黒は神罰の石が作り出す暗闇とは違うの。後者はまるで空洞のよう、周りの世界を飲み込んでしまう。その感覚を説明するのは難しいけど...」ナイチンゲールは少し躊躇った。「穴の中が真っ暗というより、そこには何もないという感じ」
「虚無?」
「そう、まさに虚無よ」彼女は頷いた。「この二つの丸薬にも同じような虚無の痕跡があるわ。ただし、極めて微細で...円形の空洞ではなく、節々に流れる黒い細い糸のような感じ」
「その虚無はあなたの能力に影響を与える?」
ナイチンゲールは丸薬を手に取り、霧を展開し、すぐに引き下がった。「特に影響はないみたい」
「死刑囚を見つけて、この二つの丸薬を試してみる必要がありそうだな」ローランは丸薬を紙で慎重に包み、懐に入れた。
「教会もあなたをそこまで評価しているなんて」ナイチンゲールは王子の傍らに座り、少し憂鬱そうに言った。