「先輩、先輩」靈兒は雲淼の寝室に駆け込んだ。
「どうしたの？あなたは一日中驚いたり慌てたりしないでいられないの？」雲淼は眉を少し上げた。幸い彼女の前にいるのは靈兒だった。もし他の人だったら、おそらくこの一瞬で魂を奪われていただろう。
「面白いことがあるわ」靈兒はにっこりと笑った。彼女が一番好きなのは賑やかなことだった。
「私は賑やかなのは好きじゃないわ」雲淼はさらりと言った。
「バスケットボールの神様についてなんだけど、それでも興味ないの？」靈兒は笑顔で雲淼を見つめた。彼女は雲淼が夏天に興味があることを知っていたので、わざと夏天のコードネームを持ち出した。
バスケットボールの神様と聞いて、雲淼は誰のことか分かった。
「彼がどうしたの？」雲淼は隠すことなく、直接尋ねた。
「彼はどうもしていないわ。でも葉清雪が誘拐されたの。彼と葉清雪の関係を考えると、彼はどうするかしら？」靈兒はくすくすと笑った。
「あなたが直接見たの？」雲淼は靈兒を見つめて尋ねた。
「うん、私はその時すぐ近くにいたわ」靈兒はうなずいた。
「じゃあ、なぜ彼女を助けなかったの？」雲淼は靈兒が助けようと思えば、葉清雪を助ける方法がたくさんあり、しかも身分を明かさずにできると信じていた。
「私が見た時には彼女はもう車に乗せられていたわ。全然間に合わなかったし、それに彼女は私にとって何の関係もない人よ。なぜ彼女を救う必要があるの？」靈兒は確かに葉清雪とは親しくなかった。一緒に食事をしたことはあったが、その食事も夏天一人だけがおいしく食べていた。
「誰がやったか分かる？」雲淼は尋ねた。
「分からないわ。でも彼女の親友の冰心が夏天に電話したわ。夏天はすぐに来ると思うわ」靈兒は悪戯っぽく言った。
「私たちも見に行きましょう」雲淼は立ち上がった。靈兒は舌を出した。彼女は先輩が何にも興味を示さないことを知っていた。バスケットボールの神様以外は。
夏天は全速力で走ってきた。タクシーよりも速かった。冰心は今、江海大學の外のベンチに座り、顔中涙だらけだった。
「冰心さん、大丈夫？」夏天は冰心の前に来た。
わーん！
冰心は直接夏天の胸に飛び込んだ。「清雪が誘拐されたの」
