「……」
男の長身で凛々しい姿がバスルームに入るのを見て、喬綿綿は数秒間呆然としたあと、顔に熱気が立ち上った。
彼女の白くて柔らかな小さな顔が、少しずつ赤くなっていった。
つまり……
彼は自分を訪ねてくる時、すでに今夜ここに泊まるつもりだったの?
この男は……早くから今夜彼女と一緒に寝る計画を立てていたのだろうか。
バスルームの明かりがついた。
すぐに、シャワーの水音が聞こえてきた。
バスルームのガラスドアはすりガラスになっていて、外から中を見ても何も見えない。
しかし、ぼんやりとした影は見えた。
喬綿綿が顔を上げると、墨夜司の姿が見えた。ガラスドア越しに、男は服を脱いでいるようで、上着を脱ぐと、上半身のラインが流麗で、セクシーだった……
彼が手を上げた時、喬綿綿は彼の腕の筋肉が盛り上がっているのさえ見えた。
男の体は……とても引き締まっていて、筋肉質に見えた。
喬綿綿は見ているうちに、心臓の鼓動が速くなり、顔も赤くなって、熱くなった。
なぜか、彼女は突然あの混乱の夜を思い出した。
彼女が意図的に忘れようとして、ほとんど忘れかけていたあの夜を。
あの夜、彼女は意識が朦朧として、多くのことを覚えていなかった。
でも、彼女の清らかさを奪ったあの男もとても良い体つきだったことは覚えていた。彼女の手が彼の熱い体を撫でたことがあった。
彼は胸筋だけでなく、腹筋もあって、手の感触だけでも彼の体がとてもセクシーだと感じられた……
彼の声もセクシーだった。
ぼんやりとした記憶の中で、彼は彼女の耳元でベイビーと呼び、そして彼が興奮した時の喘ぎ声……
考えただけで、喬綿綿は顔を赤らめ、心臓がドキドキした。
彼女はもうあの男の声を覚えていなかった。
でも……
墨夜司が彼女をベイビーと呼ぶのを聞いた時、彼女はあの男を思い出した。
墨夜司と彼女の清らかさを侵した憎むべき男を同一人物だと想像していることに気づいた喬綿綿は、眉をしかめ、すぐにこの考えを捨て去った。
彼がどうしてあの強姦犯であるはずがないだろう。