昔々、あるところに大二郎という少年がいた。彼は他の子と友達になれず、村を散歩することだけを趣味とする変な子であった。
大二郎、と母に声をかけられた大二郎は言葉を交わすのも不得意で、ただただ心配そうな目で見返して、何?と言わん間目つきを逸らす。
繰り返して大二郎、と、友達を作る気にならないのかい?、母は田んぼ働きの恰好で気がかって言う。大二郎は瞼を広げて口に言葉を出そうとするが、途中で止まる。彼はどうして話せないのか分からないのだ。よって胸苦しいが、母がそれを指して言う。
まぁええわ、それより料理するから井戸から水持ってきな、と。母親も性格軽いところがある。
大二郎は家から出ると、塀の近くに遊んでいるゆうちゃんという2個歳したの男の子と11歳ぐらい、大二郎と同い年と思わせる女の子が一緒に遊んでいる。
お〜!君!一緒に遊ぼう!と女の子は言う。大二郎は相変わらず口に挟むのである。
ゆうちゃんは言う、この個大ちゃんって言って他の子と遊ばないの、一人が好きみたい。
大二郎は1人が嫌いのではないが、友達を作りたいのである。しかし言葉に挟むのが恥ずかしくて、モクモクと誘いに断ってしまう。
え〜大ちゃんっていうんだ〜と女の子は話を途中まで聞いていなかったみたいに答えて、最後に、大ちゃん遊ぼう〜って手を伸ばしながらいう。
大二郎はまた口だけ開けて、頑張って
き、きょ、今日無理、となんとかはっきりと断る。井戸から拾っていた水をしかと持って背中を向けたら後ろから浴衣引っ張られる
じゃあ明日遊ぼう
驚いた大二郎はゆっくりと振り向いて、不慣れな微笑を浮かびながら
い…いいよ。