許夫人は興奮して言葉も出ないほどで、携帯を指さしながら泣き出した。
許文宗は少し驚いて、携帯を置き、彼女の背中をさすりながら言った。「このビデオの人は顔がはっきり見えないよ。必ずしもそうとは限らない。落ち着いて。調べてみるから!」
「うん、早く行って……」
許夫人は許文宗を押して外に出そうとした。
許文宗は眉をひそめて部屋を出た。
許夫人は考えた末、許文宗の力では、おそらくあの女の子が誰なのか調べられないだろうと思った。相手はキャップとマスクをしているのだから。
娘が帰ってきたのに、自分と再会しようとしない……きっと南歌は犯人が近くにいることを知っているからだ!
許夫人は拳を握りしめ、ベッドサイドから自分の携帯を取った。
WeChat を開くと、2日前に許三と追加したばかりのアカウントがあった。
彼女はここ数年控えめに過ごし、海城では自衛する力がなかったので、許三と二度と会いたくないと思っていても、軽重緩急を判断することはできた。
彼女は直接許三にメッセージを送った:【お願いがあるのですが。】
許三は即座に返信した:【何なりとお申し付けください。】
前の8文字を見て、南靖書の表情が一瞬凍りついた。
彼女は唇を噛みしめ、複雑な気持ちになった。
過去の出来事はすべて心の奥に埋めてしまい、彼女は今生涯彼とかかわりを持ちたくなかったが、娘のためには……
南靖書は深呼吸をして、ゆっくりと入力を始めた:【娘の情報が入ったので、あなたに手伝ってもらいたいのですが……】
入力中に、突然病室のドアが開いた。
南靖書は少し驚いて顔を上げると、許文宗が入ってくるのが見えた。
南靖書はさりげなく聞いた。「文宗、何かわかった?」
許文宗は彼女に近づきながら、眉をひそめて言った。「もう調べるよう頼んだよ。書くん、焦らないで……」
ここまで言って、彼は南靖書の携帯に目を向けた。「誰にメッセージを送ってるの?」
南靖書と許三の間には隠し立てすることはなかったので、彼女は許文宗に隠さずに携帯を渡した。「私たち二人の力では足りないかもしれないと思って、許三老爺に助けを求めようと思ったの。結局、南歌の命がかかっているから。」