「人智を超越した要因が存在します……」クラインは目の色が正常に戻ると、脇にいるレオナルドとフライに顔を向けた。
突然レオナルドが笑い出す。
「プロですねぇ。さすが占い師。」
それは何かを暗示してるのか……?クラインは声には出さず呟いた。
フライはトランクを開けて銀製のナイフ等を取り出し、数秒動きを止めてから言った。
「遺体が告げている。彼女は確かに急性心臓病で死んだと……占いでもっと詳しいことを知る方法はあるか?」
クラインは真顔でうなずく。
「『霊能』の儀式と『夢占い』を組み合わせて試すことはできます。ローヴィス夫人に残っている霊性から何か得られるといいのですが……」
フライは無表情で冷ややかな態度のまま、数歩下がった。
「お先にどうぞ。」
そしてクラインに顔を向けると、不意に棒読み口調で褒めた。「こういう場面にどんどん慣れて来てるな。」
俺だってそうしたいわけじゃ……クラインはちょっと泣きたくなりながらも、使う予定のフラワーウォーターやエッセンシャルオイル、草薬粉末を次々と取り出し、急いで「霊能」儀式の陣を完成させた。
霊性の壁の中央に立ち、黒夜女神の尊名を心の中で唱え、ヘルメス語で祈りを捧げる。
すぐに彼のまわりに風が巻き起こり、光が徐々に暗くなっていく。
目が真っ黒になると、クラインは透かさず占いの言葉を繰り返し心の中で暗誦する。
「ローヴィス夫人の死因。」
「ローヴィス夫人の死因。」
……
立ったまま夢に入ると、模糊とした空間で遺体のまわりを彷徨っている透明な魂が「見」えた。
幻の右手を伸ばし、ローヴィス夫人に残留している霊性に触れる。
その瞬間、目の前で光と影が炸裂し、いくつもの場面が現れては消えていった。
顔が黄ばみ、痩せこけた体に襤褸をまとった女性がせわしなくマッチ箱を作っている。
急に仕事の手が止まり、胸を押さえる彼女、
2人の子供と話している彼女、
体がふらつき、はあはあと喘ぐ彼女、
ライ麦パンを買いに行って、いきなり誰かに叩かれる彼女、
心臓に問題があることを物語る兆候が何度も現れる彼女、