駆けてくる足音がだんだんと近づいてくるのがクラインの耳にも聞こえ、当直室の入口に立っていた彼はだいぶ安心した。
「何があった?」最初に到着したレオナルドは回転式拳銃を握り、低い声で聞いた。
ブレーキが利かないような様子の彼を見て、クラインは以前ロクサーヌから聞いた話をふと思い出した。3年前、「眠らぬ者」になったばかりのレオナルドはポーションの力にまだなじまないうちに、全速力で階段を駆け上がろうとして、車輪に変身してしまったという。
軽くせきをして、クラインはチアニーズの扉を指さした。
「さっき激しくたたく音が中から聞こえてきた後、何かがぶつかる衝撃があって、その後で扉が少し開いたんです。」
「チアニーズの扉が開いた?」背の低いコーヘンリーが驚いて聞き返した。
「そうです。中から押されて細い隙間が開いたんです。」クラインが説明を続けようとしたが、レオナルド、コーヘンリー、ロイヤルは当直室には近づかず、数歩離れた所で止まり、円弧の形に広がった。まるで自分を警戒しているかのように。
彼は一瞬硬直し、言った。
「僕を疑っているのですか?」
「違う、疑っているわけじゃない。これは正常な処理のプロセスなんだ。」コーヘンリーは頭を振って否定した。
このような緊張した雰囲気の中でも、レオナルドはいつも通り深刻さの足りない笑顔で補足した。
「別の教区で、似たような案件が起こったことがある。チアニーズの扉を守っていた超越者が暴走し、ベルを鳴らした。駆け付けたメンバーの油断につけ込み、一気に2人をも殺したんだ。」
「わかりました。」クラインの疑われた悔しさと怒りは消え、別の事を聞いた。「では僕は自分が暴走していないことを、どうやって証明すればいいのですか?」
レオナルドは笑顔を消し、胸の上の4カ所を指し、低い声で唱えた。
「彼らは裸であり、着る物も食べる物もなく、寒さに身をおおうべき物もない。」
「彼らは雨にぬれ、しのぎ場もなく岩にすがる。」
「彼らは子を奪われた母であり、彼らは希望のない孤児であり、彼らは無理矢理に正道から外された貧しい者である。」
「暗闇は彼らを見放さず、彼らに愛を与える。」
……