クリスティーナは占者の困惑に気づかず、受付にいるアンジェリカをちらりと見やり、声を抑えて言った。
「ラルウスの子のことですよ。」
彼女は隣にいるフリルハットをかぶった若い娘を指差した。
「この子は私の姪のメルゴナース、母親は私の一番上の姉です。私は、ラルウスを優秀な若者だと思って、未婚の彼にメルゴナースを引き合わせ、2人が恋人同士になってしまったのをそばで見ていたことを後悔しているし、申し訳なく思っています。」
「メルゴナースの両親も前はラルウスを気に入っていて、婚約後、貯金の全額を製鉄会社に出資するつもりだったんです。幸いだったのは、そうなる前にラルウスが逃げ出したので、一家が致命的な損失を被ることはなかったこと、不幸だったのは、姉と義兄は親戚や友人に婚約が解消されたことを説明しなければならなかったこと、そしてメルゴナースのお腹の中にはすでに子どもができてしまっていたことなんです。」
「私たちは蒸気と機械の神を信じていて、嵐の主の信徒ではないし、結婚まで貞節を守らなければならないとは考えてはいません。メルゴナースを責めるつもりはないし、同情さえしています。でも、子を作ってしまったことは悩ましい問題で、特に、父親はああいう人間だったから……」
金のみならず、貞操まで……そばに静かにたたずむメルゴナースを見やったクラインは、娘がかなりの美人であることに気づいた。
滑らかな額、長いブロンドの髪、クリスティーナによく似た大きな目。その彼女は今、憂いを帯びた沈んだ様子で唇をすぼめている。
なんてひどい詐欺師なんだ、しかもまんまと逃げおおせたなんて……クラインは心の中でラルウスを罵ると、少し考えて言った。
「子どもがもう生まれているなら、ラルウスのだいたいの行方を占う方法はありますが、残念ながら、それにはまだ何ヶ月も待つ必要があります。これは先ほどの占いの結果が具現化したものかもしれませんね。辛抱強く待ち、最後まで持ちこたえ、二度と欲をかかなければ転機が訪れ、陽の光が差し込むという……」
「何ヶ月も……」クリスティーナは頭を振りながらつぶやいた。「そうなったころには、たとえラルウスが見つかったとしても、お金は取り戻せないですね……」