クラインは頷いて言った。
「わかりました。でも僕の任務が一体何のか、まだ知らされていませんが。」
「危険な仕事ではない。少なくとも現時点では、危険な兆候はまだみられない。」ダンはまず大事な点に触れ、それから続けた。「これは金梧桐区警察局から移管された事件だ。有名な慈善家のデビル騎士が、この1か月間、奇妙な嫌がらせを受け続けているんだが、ボディガードも、雇われた警備員も警察も犯人を突き止められずにいる。この事件を担当しているトーラー捜査官は、人智を超えた力と関連しているのではないかと強く疑っているため、この事件が我々のところに来たのだ。」
そういえば前に図書館でデビル騎士を見かけたが、機嫌が悪く、元気がなさそうだった。なるほど、嫌がらせを受けていたんだな…クラインは少し顔をしかめて尋ねた。
「どんな嫌がらせなんですか？」
この事件はまだ実質的な被害が出ておらず、確かに危険性があるとは言えない。
「デビル騎士は毎晩、叫び声やうめき声が聞こえるそうだ。どこで寝ていようと、ティンゲンにいようといまいと関係ない。そのせいで睡眠の質がひどく悪くなっている。」ダンは手元の資料をめくりながら言った。「精神科医の診察も受けたし、いつもそばにいる執事や使用人にも尋ねて、幻覚ではないことを確認したそうだ。こうしたことから、誰かが嫌がらせをしているのではないかと疑っている。」
書類をまとめると、ダンはクラインを見上げた。
「休憩室で見習い捜査官の服に着替えて、射撃倶楽部のホールでトーラー調査官に会うように。さらに詳しい説明があるだろう。」
「見習い捜査官の服、ですか？」クラインは思わず聞き返した。
ダンは額に手をやり、笑って言った。
「我々の給料の半分は警察庁から払われているし、見習い捜査官という肩書はただの書類上の存在ではない。私たちが初めて会ったときに、レオナルドも私も制服を着てただろう？これは正式の隊員全員が持つ特典で、そうだな、ロッセール大帝がおっしゃるような特典だ。」
普段着られないのが残念だ…普段も着られるなら、着替え用の服がもう一着増えるのに。クラインはステッキを手に取り、一礼して、隊長のオフィスを後にした。
