訝しんでいる妹の視線を受け、クラインはふとこれはチャンスだと考えた。相手をじろじろと観察し、真面目な顔をして言った。
「メリッサ、お前も今日の晩餐を軽視してるな。」
「え？」メリッサはきょとんとしている。
クラインは彼女の首を指差した。
「女性なら、ここを飾るネックレスが要るだろ。」
クラインはニッコリ笑うと、妹が口を開く前に、ポケットから、天使の羽で装飾した銀製のお守りを取り出した。
「よかった、お前のために用意しといたんだ。」
「…」メリッサは呆気にとられていたが、すぐにこう返してきた。「いくら？」
妹よ、関心を寄せるべきはそこじゃないだろ…クラインは心の中で突っ込み、笑顔で説明した。
「もとは半製品だから、確かにそう高いもんじゃない。前に見た文化財を真似て、祝福のまじないと綺麗な模様を彫刻したんだ。」
「兄さんが？」やはりメリッサが食いついた。
「どうだ？僕の腕は？」クラインはそのままお守りを妹に手渡す。
メリッサは様々な角度から観察し、唇を軽く噛んで言った。
「まわりの天使の羽がいいね。」
彫刻した呪文や符号がダサいならはっきり言えよ、ごまかさなくていい…お守りで大事なのは効果なんだ。クラインが微かに口元をゆがめながら受け取るよう妹を説得しようとすると、彼女は「仕方ない」といった表情でネックレスを首に着け、お守りの位置を整えた。
「完璧！」クラインがまじまじと見つめて大げさに褒めた。
メリッサは彼をチラ見し、俯いてお守りを見ながらぼそぼそと言った。
「クライン、前はそんなじゃなかった、そんなじゃ…」
「いい仕事に就いて、いい給料がもらえるようになったから、自信がついたのかもな。」クラインは妹の言葉を遮って説明した。
あ～、以前の主の記憶の断片を受け入れて、大体は問題ないけど、細かいところではつい本性が出ちゃうんだよな…特にベンソン、メリッサは付き合いが自然になってくるほどね…彼は密かにため息をついた。
メリッサは彼が言った理由を認めたのか、口を尖らせた。
「今のほうがいいよ、本当に…」
